「ちょっと、こんなところに呼び出して何するつもり、」





お昼休み、隣のクラスの一也に呼び出されてついて来てみれば、連れ込まれたのは野球部の寮に隣接されたシャワールームだった。普段は部員たちで賑やかであろうこの場所も、今は校舎の喧騒からも離れてとても静かだ。そんなところにグイグイと腕を引っ張られ連れ込まれ、連れてきた本人はメガネの奥でニヤニヤと笑みを浮かべている。このあと何をされるかは、想像に難くない。
だけど、ここは学校だ。一也の思うままにされる訳にはいかない。非難の視線を込めて、自分の身体とシャワールームとの壁で私を挟んでいる一也の胸元を押し返すけれど、一也はますます私との距離を縮めてくる。





「何って、ナニだろうね〜」

「バカなこと言ってないで、どいてよ」

「残念ながらそれは出来ないんだなあちゃん」

「なんで」

「だってさ、もう1ヶ月以上もに触ってないんだぜ」





ヘラヘラと笑いながら、一也がその顔を首筋にくっつける。
それを言うなら私だって、そうだ。部活で忙しい一也と最後にデートしたのは、1ヶ月半ほど前にテスト週間で完全に部活がオフの時だった。それでも文句も言わずに頑張って耐えていたのに、そんなこと言われたら、私だって一也に触りたかったしキスだってしたかったし、どうしようもない我儘な欲望が溢れてしまう。
ここが学校で、健全な生活を送るべき場所であることは重々承知の上で、一也と不健全なことがしたいって、思ってしまう。
ちゅっ、ちゅっと小さく啄むように音を立てて一也が首筋にキスを落としていく。制服越しに一也の手の平の温度を感じて、その心地良さに身を委ねようと目を閉じた。ぷちぷちとブラウスのボタンを外す音、捲り上げられたスカートの衣擦れの音、目を閉じているからなのかやけに大きく聞こえてきて気恥ずかしい。
一也の指が器用に下着のホックを外して、外気に晒された胸が大きな手に包み込まれた。練習で鍛えられたその手の感触が、とても好きで堪らない。やわやわと手を動かされるたびに思わず声が漏れてしまう。





「ん、うっ・・・」

ってばそんな声出しちゃって、感じてんだ?」

「、うるさいっ」

「素直じゃないね」





既に硬く立ち上がった胸の頂を強く摘まれれば、一際大きな声が漏れる。見なくたって分かる、今一也は絶対嬉しそうにニヤニヤしてるって。
一也の思うがままなのがなんだか悔しくて、ちょっと逆襲でもしてやろうかと、私の捲れたスカートから伸びる足に押し付けられている一也の下半身に手を伸ばした。触れたそこはやっぱり熱く硬く存在を主張していて、指先でそっと触れただけなのにピクリと一也が反応する。
仕返ししてやったと少し嬉しくて小さく笑いを零したら、それが気に食わなかったのか、笑い声を消すように一也の唇で私のそれが塞がれてしまった。急なキスに驚いた隙に舌が侵入してきて、口内を犯される。何度も何度も角度を変えて、必死に舌を絡めあう。しまった、一也のスイッチを入れてしまったみたいだ。
荒々しくキスを続けながら、まだ体に纏わりついていたブラウスと下着を乱暴に取り払われて、一也の手がスカートの中に侵入してきた。一也の愛撫とキスでとっくにその役目なんて果たしていなかった下着のクロッチ部分の上から敏感なところを探し当てるように擦られて、さらに体の奥から我慢しきれずにだらしなく蜜が溢れてくる。
その快感に思わず何もかもを投げ出してしまいたくなるけれど、1ヶ月以上も肌を重ね合わせていなかった一也にとってそれはあまりにも酷なことに思えて、一也のズボンのベルトを外し、下げたチャックの隙間からそっと手を差し込んで直に一也のそれを手にした。
熱いそれを指で上下にしごく度に、キスの合間合間に一也から吐息が漏れる。そっと目を開けば、眉間に皺を寄せて必死に耐えているかのような表情。堪らない。
私しか知らない一也の吐息。私だけの一也。好きで好きで仕方ない。





「っ、ってば、やらしー」

「お互いさまでしょ、」

「ははっ、そっか。・・・・・・やべ、ちょっと我慢できないかも」

「私も、もう我慢できない」





やっと解放された唇からお互い必死に酸素を吸い込みながら、制服が皺になることなんて一切考えずに脱ぎ捨てる。
一也の引き締まった身体に直接抱きしめられて、それだけでもどうにかなってしまいそうなのに、片足を持ち上げられて一気に最奥まで挿入されれば、つま先から頭のてっぺんまでビリビリと快感が駆け抜けて自分のものじゃないみたいな声が出てしまう。
突き上げられるたびに零れてしまう嬌声は、静かなシャワールームに良く響く。昼休みにこんなところまでわざわざやってくる生徒はいないだろうけど、それでも誰かに聞こえてしまったら大変なことになる。そう分かっているのに、一也が私の気持ちいいところばかりを攻めるから、必死に唇を噛みしめる。





「こら、、そんな声出すなよ」

「っだって、一也がぁ、」

「しょうがねえな、ほら後ろ向いて壁に手ついて、」





不意に私から離れた一也に促されるがままに、壁の方を向いて手をつく。
腰を掴まれて、そのまま後ろから挿入される。向かい合っている時とはまた違うところを刺激されて、何がしょうがないのか全く分からない。すると背後から一也の手が回されて、口元をすっぽり覆われた。
耳元で熱い吐息と一緒に一也の声が鼓膜を揺らす。





「俺が口塞いでてやるからさ、もちゃんと我慢しろよ」

「んっ、う、一也、あっ・・・!」

「俺以外に、そんな可愛い声聞かれたら困るんだよ」





一也が腰を打ち付ける速度が増して、私の口を塞ぐ一也の手をだらしなく垂れる私の唾液で汚してしまう。
恥ずかしい、だけどもっと、一也でいっぱいにしてほしい。そんな矛盾した感情でいっぱいになる。
私だけの一也。一也だけの私。
誰にも見せたくない、聞かせたくない、お互いどうしようもないほどに好きなのだ。
遠くで昼休みの終了を告げるチャイムが鳴っているのを聞きながら、一也と私の熱量でシャワールームは温度を上げていく。何の変哲もない、殺風景で無機質なシャワールームでさえ、2人でいればきっとどこだって愛に埋もれた場所になるんだろう。
だから、せめて今だけはシャワーカーテンの向こう側での不健全を、見逃して。





シャワールームの美学