湿った風の吹く一日だった。夏は近いけれどまだ夏じゃなくて、でももう夏みたいに陽射しに強い日が何日か続いた後で、急にひんやりと湿り気を帯びた風が吹いてこの街の梅雨は始まる。ハッキリ言って梅雨なんてジメジメ鬱陶しいだけで全く役にも立たないと思う、けどそんなことを口に出したら農家のおっさんたちからかなりのクレームが来るだろう。本当に嫌な季節だ。
ぼんやりそう思いながらぶらぶら帰り道を歩いていたら、ついにポツッと小さな雨粒が俺の鼻の頭を濡らした。それをきっかけとしてか、一気に大量の水滴が落ちてくる。折りたたみ傘は持っていた。けれどスポーツバッグの奥だ。それを今こんな道端で探し出すのはバカみたいで、とりあえず屋根を探して走る。ちょうど屋根を見つけて駆け込むと、先客がいた。










「あ、

「あ、瑞垣くん」

「なんや、傘持ってないんか?」

「んー、持ってきてたんだけど誰かに盗られちゃったみたいで・・・」

「へぇ、そりゃ災難やったな」










そこで会話は途切れた。はカバンの中からタオルを取りだして濡れた体を拭いている。思わず目が吸い寄せられた。既に夏服のの白いセーラー服は濡れて肌に張り付いて、うすくその下の色が見える。ジワリと目の奥が熱い。健全な男子中学生の証拠だと、頭の端っこで思った。
雨脚はいっこうに弱まらない。傘を持っているのに使わない、なんて好い加減傘に叱られるだろうか。スポーツバッグの底を漁って折りたたみ傘を取り出す。バットみたいに振り下げて傘を開く。の方を向いて傘を持っていない左手を差し出した。










「お嬢さん、俺と一緒に相合い傘なんてどーでしょう?」

「喜んで、瑞垣くん」










少し赤くなってが右手を差し出す。指先が触れて、それから俺はの右手をしっかりと握る。掴まえたその手を離さない。
雨はまだ、止まない。夏はもう、近い。





















(いっそのことこのまま雨が止まなきゃいいと思った)