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「女の子は砂糖とスパイス、それから素敵な何かで出来ている」、らしい。それは果たして本当なのかと、廊下で一歩先を歩く、ポニーテールの後姿を見つめる。日直の最大の仕事と言っても過言では無いだろう、日誌を書き終えて職員室に提出しに行くために、夕日が差し込む廊下を歩いている、俺と。面倒くさそうにする俺に何の文句も言わないで、てきぱきと雑務をこなす姿はまるで甲斐甲斐しい。 やっとすべての仕事を終えて、「じゃあ、私これ職員室に持っていくから国見くん部活行っても大丈夫だよ!」なんて満面の笑顔で言われれば、無いわけでは決して無い一抹の罪悪感が顔を出す。 「体育館と方向一緒だし、俺が持ってく」 「え、でも」 「いいから。は帰るんだろ?早く荷物まとめたら?」 「、うん、ありがとう国見くん」 何が「ありがとう」なのか良く分からないけど。だって、俺はほとんど大した仕事してないのに。部活の道具が入ったエナメルバッグを肩から掛けながら、先に行ったって良いんだろうけど、それもなんだか冷たいような気がして、が荷物を纏めるのを待つ。 「お待たせしました!」とが立ち上がるのを確認して、パチンと教室の電気を消した。廊下の空気はすでに温度を下げ始めていて、またこれから冬がやってくるのかと思うと気分が滅入る。秋はきっとすごく早足だ。すぐに冬が来る。寒いのは嫌いだ。ポニーテールのうなじは、すごく寒そうに見える。冬が来ても女子というのはスカートを短くしたり髪を結んだり、自分を着飾るということに余念が無くて、男に生まれて良かったと心から思う。何がそんなに彼女たちを、を、そこに向かわせるんだろうか。何から出来てんの、君たち。 お砂糖?スパイス?素敵なもの?それって本当なのか?それが冬の寒さを必死に堪える原動力になるのか?ねえ、お前は砂糖みたいに甘いの?それともスパイスみたいに辛いの?確かめさせてよ。 無防備に歩くの腕を掴まえて引き寄せて、そのままそのきれいなピンク色の唇を奪えば、俺の疑問は解決するに違いない。日誌を持っていない方の手を差し出そうとした瞬間、不意に目の前のポニーテールが揺れてが振り向いた。 「あっ、国見くんって甘いもの好き?」 「え?あ、うん、まあ好きだけど」 「じゃあこれあげる!塩キャラメル!今日朝コンビニで買ってきたんだ」 「・・・ありがと、」 「どういたしまして。よし、ササッと日誌提出して帰ろう!国見くん部活だもんね」 差し出しかけた掌をそのままに向ければ、ころんと小さな銀色の包みが落とされる。俺の大好物が塩キャラメルだってことはは知らないに違いないんだけど、それでも手渡されたその包みに、心臓がどこか痛い。見慣れた包み紙、食べ慣れた味。だけど本当に今食べてみたいのは、大好物の塩キャラメルなんかより、砂糖みたいに甘いのかスパイスみたいに刺激的なのか気になって気になって仕方ないお前なんだよ、なんて言えるわけもなく、銀紙を開いて茶色い塊を口に放り込む。 じんわりと溶け出る甘さが、お前だったらいいのにって思うんだ。 |