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「ちゃーん!さて問題!今日は何の日でしょうか?」 「・・・バレンタインデー、です。絶対催促されるだろうと思って一応用意しておきましたよ一応ね。はいどうぞ白澤さま」 「んー半分正解、半分不正解、かな!ヨーロッパなんかではね、男性から女性に愛を告白したりするらしいよ」 「そうですか。じゃあ白澤さまは愛を告げる人が多くてさぞかし大変でしょうね」 「うぐっ・・・ま、まあそれは置いといて、ね!ちゃんに僕からチョコレートのプレゼントだよー」 「・・・(置いておくのか)これ、かなり溶けてるみたいですけど、もしかしてチョコレートフォンデュってやつですか?」 「んんーまたまた半分正解、半分不正解!」 「どういうことですか白澤さま」 「つまりこれは、日頃僕を殴ったり蹴ったり投げ飛ばしたりで疲れているちゃんのためのチョコレートマッサージだよー。僕特製の配合で冷え性肩こりに効くし美容にもばっちり!そしてもちろん食べられる!」 「はあああぁぁぁ!!??(いかがわしさ満タンなんですけど!!!!)」 とりあえず一発白澤さまを殴ったものの、やはり白澤さまは専門家ということもあって漢方だけでなく整体や鍼治療もお手の物だ。伊達に数千年生きてない。薬草を煎じたり白澤さまを殴ったり畑の整備をしたり白澤さまを蹴ったり荷物を運んだり白澤さまを投げ飛ばしたりして日頃酷使している私の身体はあちこち疲労が溜まっていたようで、白澤さま特製のチョコレートマッサージはちょうどいい温度で私の疲れをゆるゆると溶かしていく。最初こそあの白澤さまに無防備に背中を晒すことに抵抗はあったけれど、こうしてマッサージされていくと心地よすぎてなんか本当にバリ島とか天国に一番近い島ニューカレドニアとかでエステを受けているみたいだ。まあここは天国に近いどころか天国だけれども。快適すぎて寝ちゃいそうだ。 「・・・ちゃん、どう?気持ちいい?」 「白澤さまー最高に気持ちいいですーありがとうございますー」 「・・・じゃあ、最後に身体全体を加温するね」 「ふあーい・・・って、え、ちょっ!?なんで白澤さま服脱ぐんですか!?バカですか!?」 「えー?今言ったじゃない、身体全体を暖めるって」 「いやいやいやいや!!!!それなんか違う、っ」 白澤さまが私の背中をぺろりと舐め上げる。「んーおいしい」とかふざけた事を抜かすのでぶん殴ってやろうとしたけど、よく考えたら私はタオルがかけられているとはいえ裸同然の姿だ。その躊躇した瞬間を見抜かれて、寝台の上でいとも簡単に両腕を白澤さまの左手に捕らえられてしまった。文句を言おうとした唇が、白澤さまのうすい唇で塞がれる。チョコレート味だ。確かにおいしい、とか言ってる場合ではないけれど! 「白澤さ、ま・・・あの、まじで私蹴り飛ばしますよ?」 「えーそんなこと言わずに、ね。あんなに気持ちいいって言ってたじゃない」 「それとこれとは違うと思います!!」 「僕がこんなにも愛を告げてるって言うのに、つれないね」 「え、ちょっと、白澤さま・・・?」 いつもへらへらしている白澤さまが一瞬だけまじめな顔をする。だけど私の制止の言葉は全く聞かないで、白澤さまの右手はするすると私の身体を撫で上げる。別にさっきのマッサージと一緒だと思えばなんてこと無いはずなのに、今は白澤さまと向き合っていて顔を見られているせいか、恥ずかしくて仕方がない。気にしないようにすればするほど白澤さまの手が触れる場所に神経が集中してしまって、時折どうしようもないような声が漏れてしまう。 大匙に掬われたチョコレートがとろりと私のお腹の上に垂らされて広がっていくのを堰き止めるように白澤さまの舌が動く。まるで私の弱い所を知っているかのように、首筋、鎖骨と白澤さまの唇が触れて、私はもう恥ずかしさと何とも言えない気持ち良さで頭がいっぱいだ。 嬉しくないわけじゃない。寧ろ本当は嬉しくて仕方ない。ずっとずっと憧れていた白澤さまの近くで薬のことを学ぶことが出来て。いつもふらふら女の人と遊んでばかりでムカつくことも多いけど、それでも白澤さまは優しくてかっこよくて、私はそんな白澤さまでも心の底から大好きで。そんな白澤さまがこうして私に触れて私を求めてくれている、嬉しくないわけがない。幸せすぎて死んじゃうくらいだ。もう死んでるけど。だけど私は白澤さまに「心の底から愛している」なんて言ったことはないし、言ってもきっと花街の女の子たちの言う「好き」と同じようにしか受け取ってもらえないと思うから言うつもりもなかった。なのに、こんなふうにされたら、我慢してた想いが溢れちゃうじゃない。 白澤さまが覆い被さって、私の視界はもう白澤さまでいっぱいだ。 「・・・っねえ、ちゃんは、他の女の子たちがくれるみたいな薄っぺらじゃない、本当の『好き』を、僕にくれるよね?」 白澤さまが私のおでこに小さくキスを落とした瞬間、下半身を圧迫感が襲う。痛い、だけど幸せ。でも痛い、それでももっといっぱい白澤さまを感じたい。生理的なのか嬉しいからなのか、思わず涙が溢れてしまったら、白澤さまがいつも以上に優しい手つきで私の涙を掬い取ってくれた。どうしてそんな、白澤さまは泣きそうな顔をしてるの。いつもみたいに笑ってないの。ねえ白澤さま、そんな顔しないでください。そんな顔で、そんな声で、私の名前を呼ばないで。本当の「好き」が欲しいなんて言わないで。我慢できなくなっちゃうから、私の「好き」が。 「っ、白澤さ、ま・・・!好き、です・・・ずっと、ずっと大好き、」 私のうわごとのような言葉を聞いて白澤さまはにっこり笑うと、深いキスを一つ私の唇に落として、小さな声で「僕も、ちゃんが、大好き」そう囁いた。 |