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「ツッキー!もうすぐ誕生日だね!プレゼント何がいい?」 決して教室中に響き渡るような大きな声ではないけれど、休み時間のざわざわと騒がしい教室の喧騒の中で、私は確かにその声をキャッチした。月島くんといつも一緒にいる、山口くんの言葉の中にあるたった一言を耳ざとく。月島くん、もうすぐお誕生日なのか、知らなかった。もうすぐ、って結局いつなんだろう。日にちをしっかり教えて欲しいのに、山口くんと月島くんの間ではわざわざ会話に日にちが出てこない。 それまで友達と話していたのに、急にうずうずそわそわし始めた私に気付いて、友達が少し怪訝な顔をする。 「・・・なに、トイレ行きたいんならさっさと行ってきなよ」 「ばかっ違うってば!別にトイレなんて行きたくないよっ」 「じゃあ何、そんなそわそわして・・・・・・あ、もしかして月島か」 「うへぇっ!?えっ、あ、いやっ、その、・・・えっと、うん」 「で、月島がどうかしたの?いつも通り山口と喋ってるだけじゃん」 「・・・・・・月島くん、もうすぐ誕生日、なんだって」 「へー、そうなんだ。で、日にちが知りたいってこと?」 「うん・・・でも急にそんな聞いたら変じゃない?」 「別に変じゃないと思うけど。まあがそういうなら私が聞いてあげよっか?ねーねー山口ー!」 「はっ!?ちょっと待って、」 聞いてくれるというからなんて頼もしい友達を持ったんだろうと感動しかけたのもつかの間、まさかの少し離れたこの位置から堂々と尋ねるなんて思いもよらなくて、慌てて友達の制服の裾を掴む。けれど友達はそんなのお構いなしに、山口くんと会話を始めてしまった。 このタイミングでそんな話題振るなんて、月島くんと山口くんの会話を盗み聞きしてたみたいじゃない。・・・まあ強ち間違ってもいないけれど。だけど防ぎようが無いのだ。私にはきっと月島くんレーダー的な何かが設置されていて、月島くんに関すること、目や耳を通じてたくさん自動的に受信されてしまうから。それだけ、月島くんのことが好きだってことだ。友達にもバレバレなくらい。 「そうだよー!ツッキーの誕生日は9月27日だから、あと約1週間後!」 「山口うるさい、なんでお前が嬉しそうに言うんだよ」 「ごめんツッキー!でも、どうせならみんなにお祝いしてもらった方がいいかと思ってさ!」 「そうそう、だから月島もそんなカリカリしない」 「・・・まあ別にいいけど」 「良かったらさ、さんもツッキーの誕生日お祝いしてあげてよ!」 「えっ!?わ、私っ?えっと、うん、分かった」 「良かったねツッキー!バレー部以外にもお祝いしてもらえるよ!」 「・・・・・・うるさい山口」 ああ、なんだかよく分からないうちに月島くんのお誕生日をお祝いすることになってしまった。こういうの、何ていうんだろう。棚からぼた餅?さっきまでは友達の行動にびっくりして照れくさくて引き留めようとしていたけど、今となっては大感謝だ。月島くんのお誕生日を知ることが出来た上に、お祝いすることも出来るなんて。友達と山口くんに何百万回お礼を言えばいいんだろう。分からないからとりあえず目の前でニヤニヤして頬杖をついた友達の反対の手を握って感謝の気持ちを伝えておいた。 あとは、月島くんの誕生日、は土曜日なのでその前の金曜日までにプレゼントを用意するだけだ。月島くんの好きなものなら、知ってる。ショートケーキだ。これも、いつかの月島くんと山口くんの会話から得た情報なんだけど。あと1週間、授業を受けても部活に出ても、私の頭はこれからしばらくは月島くんのお誕生日のことでいっぱいに違いない。 ◇ そうして迎えた、月島くんの誕生日前の金曜日。山口くんは明日当日に部活でお祝いするからとプレゼントは持ってきていなかったけれど、プレゼントを持って月島くんの席に集まっている私と友達と一緒に、ニコニコしながら立っている。私はと言えば、プレゼントは用意したものの本当にコレで良かったかなだとか喜んでもらえなかったらどうしようだとか色んなことをぐるぐる考えて、プレゼントが入っている紙袋の取っ手を持つ手が震えてしまう。そんな私をよそに、友達はいつもと変わらず淡々とした調子で、さっそく月島くんにプレゼントを渡している。 「何がいいのか分かんなかったからさ、とりあえずコンビニで買ったお菓子詰め合わせとスポドリの粉!おめでと!」 「、ありがとう」 「あ、お返しとか私は別にいらないから!じゃあ、ほらの番!」 「う、うんっ・・・えっと、月島くん誕生日おめでとう。これ、良かったら・・・」 月島くんに紙袋を手渡す。ガサゴソと音を立てて月島くんが取り出したのは、私手作りのタオルケーキ。一応、月島くんの好きなショートケーキをイメージして、部活で使えるようにって白いスポーツタオルを土台に、あとはオーナメントで飾りつけてある。本当は本物のショートケーキが良かったんだけど、学校に持ってくるのは至難の業だったし、もし何かあって月島くんがお腹壊したりしても大変だから。そう思って、夜寝る前にいろんなホームページを参考に作ったプレゼント。喜んでもらえるかな。 ドキドキしながら月島くんの様子を伺うと、なんだかよく分からない表情でしげしげとプレゼントを眺めている。 「あの、月島くん・・・?気に入らなかった・・・?」 「・・・いや、すごいな、って。これ、さんが作ったの?」 「うん、あんまり綺麗に作れなかったんだけど・・・」 「そんなことないよ、上手だと思う。ありがとう、さん」 「ありがとう」その言葉だけで私は今にも天に昇れちゃいそうなほど嬉しいのに、なかなかお目にかかれない月島くんの小さな笑顔まで見ることが出来て、私本当に幸せすぎてどうしよう。誰かのお誕生日をお祝いすることがこんなにも嬉しくて幸せなことだと思えるのは、きっと月島くんのおかげだ。 「さんの誕生日、何かお返しするよ」 「えっ!?いや、そんなとんでもない!気にしないでいいよ月島くん」 「いいから、誕生日教えてよ。それとも僕からのプレゼントはいらないってわけ?」 「いや、いやっそんなことはないよ!あの、嬉しいです、はい」 「そう、ならいいけど」 さっきの笑顔とは違う、少し意地悪な笑顔。 ねえ月島くん、私誕生日まで無事に生きていられるかな。今まで知らなかった月島くんをこんなにたくさん知ることが出来て、心臓がもたないよ。 だけど願わくは、もっともっと、私しか知らない月島くんが欲しいと思うんだ。 |