、」





背後から声をかけられた。振り向くまでもなく、私はこの声の持ち主を嫌というほど良く知っている。男の子だけどきれいな顔をしていて、とても知的に見えるせいで、学校中の女の子からモテモテもてまくりの赤司くんだ。周りの女の子たちは赤司くんを見ると顔を真っ赤にしてもじもじしてる。声をかけられた日には喜びのあまり死んじゃうらしい。友達が言ってた。だけど私は赤司くんを見ると顔が真っ青になるし、声をかけられたら決して喜びではない感情で死んじゃいそうだ。
だって赤司くんは、あんなきれいな顔をして知的に見えるのに、どうしようもない変態野郎なんだ!





「・・・・・・」

「無視するなんて酷いな、何をそんなに怖がってるんだよ」

「コワガッテマセン」

は相変わらずかわいくて面白いな」





声をかけてきた赤司くんを振り返ることもせず廊下をずんずん進んでいく私の後ろを赤司くんがついてくる。いや、尾けてくる。本当なら走って逃げたいんだ。でも赤司くんの前でそんなことしたら「廊下は走っちゃいけない」とかなんとか言われてお仕置きされてしまうからそれだけは避けたくて、競歩みたいになる。私は今ならオリンピック選手になれる。
必死に競歩する私の後ろを赤司くんは何事もないように普通に歩いて追いかけてきて、「ねえ、今日はどんな下着履いてるの?」とか「そんな早く歩いたらスカートが捲れてしまうよ他の奴らに見せたら許さない」とか言っている。怖すぎます赤司くん!他の女の子はこんな赤司くんをいつも見ていて変だと思わないのか?!そして何よりなんで単なる一般生徒の私が全国制覇を成し遂げたバスケ部主将の赤司くんに追いかけまわされなければならないのか、誰か5文字以内で説明してほしい!
いつまでも追いかけてくる赤司くんにどうしようもなくて、ここならさすがに赤司くんも来れないだろと思って近くの女子トイレに駆け込んだ。





「ふっふっふっ・・・!ここなら、赤司くんも、入ってこれまい!」

「え?俺ならここにいるけど」

「、赤司、くんっ!!」





私の考えはいとも簡単に覆されてしまった。赤司くんは平然と女子トイレに入ってくる。さっきまで必死で逃げてきたせいか、ここは校舎の端の人気のない廊下にあるトイレだ。使用中の女の子は一人もいない。赤司くんから遠ざかろうと一歩下がったら、赤司くんが二歩近付いてきた。笑っているのか、なんなのか、赤司くんの表情は良く見えない。さらに二歩下がったら、赤司くんは四歩近付いてきて、あっという間に私と赤司くんの距離は縮まってしまった。そのまま一番奥の個室に追い込まれる。
がちゃり、鍵を閉める音だ。赤司くんは、笑ってる、みたい。





、追いつめた」

「あ、あ、赤司くん・・・どうして追いかけるの」

が逃げるからだ」

「私、赤司くんに何かしましたか?身に覚えが全くないんだけど・・・怒らせたならちゃんと謝るから、追いかけないで、」

「怒ってない。だけどは俺に何をしたかまったく無自覚だ」





赤司くんにさらに追い詰められて、壁と赤司くんに挟まれる。私、一体何をした?赤司くんがまっすぐこっちを見てくるから目を合わせられなくて、鼓動が速い。こわい、なんか違う。ああ、赤司くんって本当にきれいな顔をしてる。そんなことをぼんやり考えていたら、不意に赤司くんの手が私のほっぺたに添えられた。










「追いかける理由も分からないなんて、は頭が悪いのか?」










アイラブユーが聞こえない
(心臓が、うるさいんだよ)