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「っちー!おかえりっ!!」 ただいまー、と玄関を開けるや否や、まるで犬のように涼太が駆け寄り飛びついてくる。「うぐっ、涼太、苦しいっ」と呻いたら慌てて私の身体を離してにっこり笑う涼太は、まるで犬のようにというか本当に犬だ。ご主人様の帰宅が嬉しくて嬉しくて仕方なくて尻尾を振りまくってる、そんなイメージが鮮やかに浮かぶ。「ただいま、涼太」そう言って途中でスーパーに寄って買ってきた晩ごはんの材料が入った袋を渡すと、涼太はますます嬉しそうに笑ってリビングにバタバタと戻っていった。ああ、犬みたいだなんて思うけど、そんな彼の笑顔に疲れ切った私はいつも癒されて、また明日も頑張ろうかな、なんて思ってしまう。いつもなら。昨日までならそうだったのだけど、今日は違う。どれだけ涼太の笑顔を見ても、癒されないこの下半身の鈍痛。重い、痛い、だるい。女の子だけ毎月こんな辛い思いをしなきゃいけないなんて、なんて不公平なんだろう! のろのろと玄関で靴を脱いでいたら、荷物を置いた涼太が戻ってきた。 「っち?どーかしたんすか?」 「んー・・・なんでもない」 「そんなわけないでしょ」 後ろからぎゅーっと抱きついてきた涼太が、私の首筋に顔を埋める。さらさらの黄色の髪が首元に当たってくすぐったい。涼太は何も考えてはいないだろうけど、おなかに回された手があったかくて少しだけ痛みが和らぐ気がする。あーあ、男の子はいいなあ。 「・・・っち、」 「なーに?」 「・・・生理、でしょ」 「んなっ!ちょっ!なんで、なんで・・・!?」 まさかそんなことを言われるなんて思ってなくて、思いっきり動揺してしまう。これじゃ違うなんて言っても誤魔化しようがない。いや、誤魔化すつもりもないけど。うん、ともいいえ、とも言わないでいたら、それこそ本当に犬みたいに涼太がスンスンと鼻を動かして、それから首筋にがぶりと噛みついてきた。 「だってーっちなんかいつもと違う匂いがするっす!」 「え、うそ、そうかな?」 「そうそう、なんかこう甘いみたいな?んー・・・」 「どしたの涼太」 「・・・むらむらする匂い」 「ばか!涼太の場合それはいつもでしょ!」 それもそうっすねー、なんてヘラヘラ笑って、だけど私のおなかを優しく撫でながら、1週間頑張って我慢するっす、と涼太が頬っぺたを膨らませる。身体はやっぱり重くて痛くてだるくて仕方ないけど、それでも涼太がこうやって一緒にいてくれるって幸せだなあ、なんて思って私も思わず笑ってしまうんだ。 |