段ボールの中に、本や小物、雑多なそれらを詰めていく作業に少々飽きて、詰めたばかりのフォトアルバムを取り出してぱらぱらとページをめくってみた。開いたのは何冊かあるうちの一冊で、偶然にもはじまりの一冊だった。アルバムのページにはただ写真が貼ってあるだけでなく、丁寧に一言コメントやシールやなんやかんやで綺麗に装飾されている。こういうの、すごくらしいと思う。何をするにせよ、その先にいる相手のことを考える。こうしてアルバムを作るのならそれを見る誰かのことを、それは未来の自分かもしれないし他の誰かかもしれないけれど、がすることの全ての先には必ず誰かがいる。そうして作られたアルバムを、段ボールがいくつも積み上げられた部屋で床に胡坐をかいて眺めている。このアルバムを作ったときのは、一体誰を思い浮かべて作っていたんだろう。写真に写っているのは高校生の時ので、友達と教室で、夏休みに友達数人と出掛けた先で、そんなふうにして切り取られた日常の一コマに添えられたコメントに、自分の名前が綴られているのを見つけた。





「文化祭の打ち上げ、黄瀬くんと・・・うわ、めちゃくちゃ嬉しそうに笑ってる」





そういえば、高校1年生の時文化祭でやったコスプレ喫茶で出店グランプリで優勝したんだったっけ。俺が執事のコスプレをして接客をしたのだから当然だ、卑怯だと、言われたような記憶もあるような無いような、だけどきっと俺がコスプレなんてしなくても優勝は間違いなしだったんだ。だって、のメイド服姿はとても似合っていて可愛かったし、そんなを目当てに来店した男子生徒が少なからずいて、に接客されて顔を赤くして喜んでいたのを知っているから。そんなふうに大成功した文化祭の打ち上げでみんなで行ったカラオケで、クラスメイトとして別に不自然な流れなんて一欠片も無くと一緒に写真を撮ったんだった。これがその一枚なんだろう。
懐かしさに心を支配されながら、次の写真へ次の写真へと視線を移動させる。自分の名前が綴られている写真は他にも何枚かあって、そこにはあの文化祭の写真と同じように満面の笑顔のが写っていた。そして同じように写真の中の俺も、モデルのくせしてキメ顔をすることも忘れ、まるでヘラリと締まりのない笑顔を浮かべてピースサインをしている。だけどきっとそれは仕方のないことで、高校1年生の俺を責める気は微塵も起こらない。この頃単なるクラスメイトだった俺とにとって、他の誰からも糾弾されることなく一緒に写真に収まることは到底難しいことだったのだから。
そんなふうにしてたくさんの写真を眺めていると、とあることに気が付いた。俺の名前が綴られていない写真もアルバムには収められているけれど、そのどれもに目立つ金色の髪の毛が写りこんでいるのだ。それは紛れもなく俺自身で、「もしかして」という期待に勝手に胸が高鳴り頬っぺたが熱くなる。ねえ、これってどういうこと?と確認しようとした矢先、未だに荷物の整理が終わらない部屋を覗き込んで、軽やかな声がかけられた。





「涼太ー!荷物の片付け終わった・・・って全然片付いてないじゃん!何してん、ああああああ!!!!」

「あ、。これ、アルバム見てたんスよー」

「見てたんスよー、じゃない!!ちょっと、何勝手にっ!」

「いやあ、も俺も若いっスねえ!」

「じゃなくて!!・・・っ、恥ずかしいから閉じてってば!」





ちょっと確認のために声をかけただけであろうが、顔を真っ赤にして床に座り込んでいる俺のもとへ駆け寄ってくる。別にアルバムなんて、写真なんて、一緒に撮っているんだから見られても恥ずかしいものなんて無いだろうに、何より一冊目のアルバムが終わる頃には俺とは付き合い始めていて、正々堂々と一緒に写真に収まって、そしてこれまでにアルバム何冊分もの写真を残してきたのだ。なんて、少し意地の悪いことを考える。だけど、こうしてとじゃれ合うようにして触れ合うのが好きで、どうしてもを困らせたくなってしまうんだから仕方がない。





「ねえ、このアルバムって俺らが付き合う前の頃のっスよね?」

「・・・・・・そうだけど、それが何」

「なんか、勘違いだったら悪いんスけど、全部の写真に俺写ってない?」

「〜〜〜っ!!!!気のせい、そんなの涼太の勘違い!自意識過剰!!」

「えー、そうっスか?だってほら、これも、これも、これにも俺写ってるっスよ?」

「ああもうっ、別にいいでしょ好きだったんだから!!」

「うん、いいっスよ。嬉しいから」





ポカポカと小さな拳で俺を攻撃するの両手を捕まえて、羞恥で真っ赤になったその顔をじっと見つめる。写真に写っている頃よりは大人びているけれど、微かに震える黒い睫毛も、いつだって瑞々しく潤うピンクの唇も、初めて出逢ったころから何一つ変わることなく俺の心をこんなにも揺さぶる。高校に入学して同じクラスになって席が隣になったあの瞬間から、ずっとずっとは俺の心臓を掴んだままで、恋心に爪を立て続けているんだってことをどうすればに伝えられるだろう。ねえ、ちゃんとその責任を取ってずっと俺と一緒にいてよ。





「・・・ずっと、俺のこと好きだったんスね」

「そうだよ、初めて涼太に出逢ってから、ずっとずっと、好きだった」

「じゃあ、これからもずっと好きでいてくれるんスよね?」

「当たり前でしょ、ずっと一緒にいてくれなきゃ許さないんだから」

「そうっスね、やっとこれからは毎日ずっと一緒にいられるんスから」





が俺の恋心に爪を立てた責任を取るようにずっと俺と一緒にいてくれるなら、俺はに永遠の「好き」を誓おう。
明日君は「」という今までの自分にさようならを告げて、「黄瀬」という新しい自分に生まれ変わるのだから。











僕の恋心に爪を立てた君

Good-bye.」様に提出。素敵な企画をありがとうございました。