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何でもわがままを聞いてあげたくなってしまう、なんて言うとまるで俺が男らしくないとか尻にひかれてるとかそんなふうに思うやつもいると思う。だけど、そいつらは全然分かってない、俺とのこと。まあ、分かってほしくもないスけど。俺と、2人が幸せならそれでいいじゃん。 だっては世界で一番おひめさまだからさ、なんて。 『涼太ー!今から帰るから!』 「いつものプリンならもう買ってあるっスよ!」 『じゃあダッシュで帰るね!』 一方的にかけてきた電話は一方的に切れる。いつも通り。今日はは会社で大事なプレゼンがあるって言ってた。だからきっと疲れて帰ってくるだろうと思って、が大好きな洋菓子店でこだわりたまごのとろけるプリンといちごの乗ったショートケーキ、きちんと買ってきておきました。あと、晩ごはんもが好きなミートソースグラタン作っておきました。うん、俺ってばなんて健気なんだろう。「俺、こんなに頑張ってるんスよ!」なんて、に恩着せがましく言うつもりはないし、多分言ったところで「あ、そう」ぐらいの反応しか返ってこないだろう。それでいい。「ありがとう涼太!大好き!幸せすぎて死んじゃう!」なんてが言ったらそれはたぶん次の日は槍が降ってくるだろう。 世の中の女の子たちは雑誌やCMでにこにこしている俺の王子様スマイルを見て、俺に尽くしたいと思っているんだろうけど、俺はそんなの欲しくない。俺は世界でたったひとりの大事なおひめさまに尽くしてあげたい、心からそう思っている。 「ただいまー!ねえ涼太ー」 「はいはい今行くっスよ。プレゼンはどうだったんスか?」 「大成功だった!ちょっと営業部長が嫌そうな顔したけど、他のみんなが助けてくれたからね」 「へー・・・」 の手から荷物を受け取りながら、俺以外の誰かの存在にちょっとだけやきもちを焼いてしまう。俺以外にものこと助けてあげるようなやつがいるなんて。本当は「は俺のだから誰も手を出さないでくださいby黄瀬涼太」ってボードを首からさげておいてほしいくらいなんスよ。というかもういっそのこと週刊誌にでもスクープすっぱ抜かれちゃえばいいのに、なんて芸能人らしからぬことを思ったりする。いや、もう婚約報道とかしたいくらいなのに。「涼太と付き合ってるってばれたら仕事しづらくなるから」ってが言うから、俺はやっぱりの言うことを聞いてしまう。 「・・・なに涼太、どうかしたの?」 「、んーん!何でもないっスよ!ほらっ、ごはんも作っておいたっス!」 「ミートグラタンだ!これ大好き!」 でも、それでいいんだ。こうやって心から幸せそうなを見れるのも、のきれいな寝顔を間近で見れるのも、の要求を先読みして叶えてあげられるのも、の細い指に自分の指を絡められるのも、の小さな唇にキスできるのも、どれもこれも世界でたった一人、俺だけに与えられた特権なんだから。 だから、これからもどうかそのわがままで俺をしばっていてほしいんだ。 |