「おー、飛雄おかえりー!晩ごはんカレーだよ」





部活を終えてへとへとになって帰宅した夜9時前、の暮らすマンションの部屋の扉を開けば、もともと旺盛な食欲がますます刺激される香りが、鼻を通って胃を刺激する。大学を出るときに連絡をしておいたためか、俺が帰る時間を見計らってカレー鍋を温めなおしてくれているらしい、玄関からすぐの廊下に設置されている小さな台所で、がぐるぐると鍋をかき混ぜていた。その格好を見て、思わずギョッとして、慌てて中に入ってドアを閉める。バタンと大きな音がしたせいか、がびっくりしたような顔で玄関に立ったままの俺を訝しげに見やる。





「・・・な、何どうしたの飛雄」

「どうしたのじゃねえボゲ!なんだその格好!!!!」

「は?なんだ、って部屋着じゃん」

「部屋着って、おまえいつもTシャツにスウェットだろうが!!!」

「だって暑いんだもんー!電気代高いからエアコン出来るだけ使いたくないし!」





鍋をかき混ぜながら答えるの格好は、いつものTシャツスウェットとは違って、なんだかもこもこしたような生地のキャミソールとショートパンツみたいな感じで、いつもは隠れている肩とかが惜しげもなく晒されていて目のやり場に困ってしまう。というか、こんな格好してて宅配便とか届いたらこいつはこのままの格好で対応するのか?バカかこいつは!ドアを開けたのが俺だから良いものの、他の奴らに対してまでこんな格好を見せるのかと思うとムカついてしょうがない。無防備なのも大概にしろと思う。部活で疲れているはずなのに、晒されたうなじに、肩に、鎖骨に、太ももに、どうしようもなく惹かれてしまう。





「オイ上着ろよ」

「なんで、やだよお鍋混ぜてるのに暑いもん」

「いいから着ろって!」

「・・・・・・あ、もしかして飛雄、」

「あ゛!?」

「目のやり場に困ってるんでしょー!」

「っ!!!!」

「あーっ図星だ!飛雄、顔真っ赤だよー?」

「ううううううううるっせぇボゲェ!!!!」





コンロの火を止めて、未だ玄関で靴を履いたままの俺に、がニヤニヤしながらずいっと近づいてくる。身長差のせいで、どうしてもキャミソールの胸元に視線が吸い寄せられて、思わずゴクリと喉がなった。それを耳ざとく聞きつけたが、ますます笑顔になって近付いてきて、とうとう玄関の扉に追い詰められてしまった。俺の着ているTシャツと、の着ているキャミソールと、2枚の布越しなのに、ふわりとやわらかい温度と感触が当たってじわりと俺の体温が上がる。
夏の気温と湿気の中で練習を終えた自分の身体が、いくら練習後にシャワーを浴びたはいえ、徒歩で帰宅したのだから確実に汗をかいているのは承知の上で、目の前のをぐいっと抱きしめた。





「飛雄のにおいだー」

「うっせぇ練習後なんだよ」

「ねえ、あれ言ってもいい?」

「あれ?」

「ごはんにする?お風呂にする?それとも、」





が最後まで言う前に、顎に手を添えて上を向かせたの唇に自分の唇を押し付ける。のシャンプーの香りがふわりと漂って、さっきまでの食欲を上回って欲望を刺激する。唇を離したら、潤んだ瞳のと目が合って、これが俺との間でのみ有効な、無言の合図だ。
金曜日の夜は、これから始まる。











夜を喰らえ
(おかわりはほどほどに)


大学生設定。彼女の部屋着にむらむらする飛雄の話。