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あれから1年と1ヶ月が経とうとしている。そんな実感なんて全然ないけど、カレンダー見たら、ああ、もうこんなに経ったんだって。早いもんだ。いろいろ頑張ってきたからかな、とか思いたい。あれから、っていうのは、つまり、野球部マネージャーだった先輩に俺が告白してフラれてから、ってことだ。つまり、去年のバレンタインデーに、既に逆チョコ経験済みってわけ。ブーム先取り。見事に撃沈したけど。まあ、あの頃はまだまだガキだったし?いや、今と一つしか年違わないけど・・・でも、今は野球部エースだし、先輩に振り向いてもらおうと必死で頑張ってきたつもりだ。 そして約1ヶ月前、流行りの逆チョコブームに乗っかって、受験生だから高校にはもうあまり来なくなった先輩を公園に呼び出して、俺は再び先輩に告白した。 「よう準太、明日のホワイトデーについてから呼び出しはあったか?」 「か、和さん!なんで学校に?受験は?結果は?」 「合格したからその報告にな。で、からは?」 「それがー・・・待てど暮らせどメールも電話も来ないんすよ・・・やっぱ、今年もダメなんすかね・・・明日は期待しない方が身の為か」 「ふーん」 「ちょっ、和さん!ふーんってなんすか、ふーんって!」 その時、先輩からの連絡を待ち続けてずっと握り締めていた携帯がブルブル震えて、メールの受信を知らせた。まさかと思って受信ボックスを開いたら、そのまさかだった。絵文字も顔文字もなんもない、ただ一文で「今すぐ公園に来て」って書いてある。嬉しさの余り思わず携帯に頬擦りしそうになったところで、あることを和さんに指摘された。「ホワイトデーは明日だろ?なんで今すぐなんだろうな」確かに・・・!まさか、やっぱり俺フラれるのか!もしかして先輩、明日は既にデートの約束してるとか?俺、この1年必死に頑張ってきたつもりなのに、自分なりにだけど。甲子園にも行けなかったけど。でも、その努力が全部報われないとか、そんなのひどいぜ神様。 公園に着いたら、先輩が1人でベンチに座っていた。 「遅いよ準太!何してたの」 「いや別に・・・あ、そいえば大学受かったそうで、おめでとうございます。和さんから聞きました」 「え、あ、うん・・・ありがと準太。それでね、」 「あ、先輩って和さんと同じ大学なんすね。先生になるんですね」 「ちょっと、準太・・・」 「俺も同じ大学にしよっかな。そしたらまた和さんとバッテリー組めるかもだし、それに・・・それに、また先輩を振り向かせるチャンスが出来る、し・・・」 「ねぇ準太、勝手に話進めて勝手に涙ぐむのやめてよ。今日呼び出したのは私なんだから」 先輩が困ったようにそう言って、それから白い紙袋を差し出した。受け取って中身を見たら、紙袋の底に、きれいにラッピングされたピンクの包みがある。頭の中が混乱してよく分かんなくなってきたから先輩を見たら、先輩は頬っぺたを少し赤くしてそっぽを向いていた。何これ、もしかしてこれお返し?バレンタインデーのお返し?ホワイトデーのプレゼント? 「先輩・・・これ、もしかして・・・」 「・・・お返し。1日早いけど、準太だって1日早くくれたんだしおあいこだよね。私、明日アパート決めに行かなきゃいけないの」 「え、じゃあ・・・先輩、」 「・・・嬉しかったよ、準太。準太が頑張ってくれる姿見て、すごく嬉しかった。ありがとね。私のために頑張ってくれて」 「先、輩・・・」 「私、準太のこと好きだよ。だから、ねえ、もうそんなに泣かないで」 頬っぺたの涙を掬いとるように、先輩の唇が軽く触れた。 |