この気持ちは、何だろう。分からない、もどかしい。私はどうして、こんなにも嬉しくて悲しくて、笑いそうで泣きそうなのか。
机の中は空っぽで、少し色褪せたカバンの中には配布されたプリントでいっぱいだ。ついでに私の心の中も、だくさんの思い出でいっぱいだ。
今日から先、私がこの教室に足を踏み入れる事はきっとない。










、」









不意に私の名前を呼んだのは、クラスの男子よりも少し幼い声、悠一郎だった。一年生のくせに何の遠慮もなく三年の教室にやってきて、私の名前を呼び捨てにする、幼なじみの悠一郎。だからこそ、彼がそういったことを気にする人間ではないことを私は知っている。教室のドアに手をかけたままで私を呼び出す悠一郎を見て、周りの人間はごちゃごちゃ言って笑う。そんなことを私が気にしないと言うことを悠一郎もまた知っているから、別段これは私たちにとって珍しいことじゃない。
校舎裏、いつも悠一郎が私を誘っては2人で昼寝をした、2人だけの思い出の場所に、私たちは並んで座った。悠一郎は何も言わないし、私も何も言わないまま、目の前を早咲きの桜の花びらが一枚散っていくのを見ていた。その花びらが地面に付いたとき、やっと悠一郎が口を開いた。










、また俺のこと置いてっちゃうんだ」










その言葉が予想どおりだったので、思わず笑いそうになった。3年前の卒業式でも、悠一郎は同じことを言ったから。君の頭の中はその言葉でいっぱいなんだろうか?そんな私を見て、悠一郎は「笑うな」と怒ったように言う。「ごめんね、悠一郎」そう言ったら、「絶対許さねー」と返事が来た。「どうして」と反論しようかとも思ったけれど、どうしてかなんて聞いたって答えは決まってるんだよねきっと、とっくに。










「俺を置いてっちゃうなんて許さない」

「・・・そんなこと言われたって、私もう卒業証書もらっちゃったし」

「じゃあ破ったらいいじゃん」

「・・・悠一郎、」

「何、

「もう小っちゃい子供じゃないんだから、そうゆうワガママやめなよ」

「・・・、」

「え?」

「・・・またそーやって俺を幼なじみ年下扱いする、はいっつもそーだ」

「だってその通りなんだから仕方ないでしょ」

「仕方なくない!」










急に悠一郎が大きな声を出して立ち上がったから、思わずびっくりしてしまった。びっくりしたまま、立ち上がった悠一郎を見ていたら、悠一郎は私に背中を向けたまま、小刻みに肩を震わせた。3年前、悠一郎は私に「俺を置いてかないで」と言った。だけど、家は隣同士だし、いつだって逢えるから。そう言って私は悠一郎をなだめた。それを聞いて悠一郎は、涙を流さずに笑った。でも今、違うのは、悠一郎が肩を震わせて泣いていることだ。3年前とは違う、悠一郎。どうして、泣くの。きっとその答えもとっくに決まってるんだけど。










「前、が卒業したときは、すぐに逢えるからっての言葉どおりだったけど、もうその言葉は通用しないんだからな!」

「・・・」

「だって、は家出て行って一人暮らしになるんだろ?そしたらすぐに逢えない、そのことちゃんと分かってんのかよ」

「分かってるよ、」

「・・・なんで、なんでそんな遠くに行くんだよ・・・なんで俺の近くにいてくれないんだよ!」

「・・・ごめん、悠一郎」










、おれはずっとが好きだから、どこか遠くにが行っちゃうなんて我慢できないよ・・・」










それが、全ての答え。どうして悠一郎が私を許してくれないのか、どうして悠一郎が泣いているのか、それが答えだと悠一郎は叫んだ。そして、私の気持ちの答えも、きっと同じなんだと思う。ねえ、嬉しいのに悲しくて、笑いそうなのに泣きそうなのは、私も悠一郎が好きで離れたくなくて、だけど私は悠一郎から離れちゃうからなんでしょう。
仕方ないんだよ悠一郎、私が幾ら頑張ったって、悠一郎が幾ら頑張ったって、私と悠一郎が隣で過ごせる日々にはいつか終わりが来るということ、分かってほしい。だから私は悠一郎に小さく言葉を告げる。











舞う、
(大好きな君にさようならを、)