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「ー!帰ろー!」 悠一郎の声はホントによく響く。悠一郎がいる自転車置き場から私がいる昇降口まで、まるで拡声器でも使ってるみたいだ。野球部だからなのかなあ。確かに悠一郎の声ってどこにいても聞こえる。体育の授業中に笑ってたり、部活中にみんなに声掛けてたり。そんな悠一郎の声が聞こえるたびに、なんか勝手に頬っぺたが緩んでしまうから困る。悠一郎活躍してるんだなあ、とか、頑張ってるんだなあ、とか考えて、私どんだけ悠一郎のことばっか考えてんのってくらい。 一緒に話してた友達と別れて、悠一郎の隣まで走っていく。 「ごめん、悠一郎待った?」 「ぜんぜーん!の方こそ待ってんの寒くなかった?」 「平気だよ、でも今日はいつもより寒かったかも」 「そっかー」 二人並んで校門を出る。時間はそんなに遅いわけじゃないんだけど、もう空は真っ黒だ。頬っぺたに当たる風も冷たい。冬なんだな、って実感。やっぱり手袋してきた方がいいのかなあ。てか悠一郎は寒くないのかな。 隣の悠一郎をちらって見たら目がばっちり合った。 「・・・手ぇ寒い?」 「え?あ、いや・・・悠一郎は寒くないのかなって」 「んー・・・」 ホントは、素直に言えたら1番いいんだけど。悠一郎と手繋ぎたい、って。寒いとかそんな理由作らなくたって、悠一郎と手を繋ぎたいよ、私。でも上手く言えないんですこの口は!このヘタレ! 何かを考えるように少し黙っていた悠一郎が左手で、不意に私の右手を掴んだ。悠一郎が押していた自転車が一瞬大きく揺れる。 「な、なに悠一郎どしたの?自転車危ないよ」 「へーきへーき!これで、こーすれば・・・あったかいだろ!」 私の右手を掴んだ左手を、悠一郎は自分の学ランのポケットにつっこんだ。それから、ポケットの中で悠一郎の指が私の冷たい指を握りしめる。うわ、一気に手の温度が上がったよコレ!なにこれ、なんかの歌にあったよねこんなシーン、なんだっけ? 悠一郎は「あったけーなー!俺もちょうど手ぇ寒かったから、そっくりだな!」って隣で嬉しそうに笑う。もう、どうしよう。思ってたこと伝わっちゃったのかな。でも、いいや。繋いだ手がすごくあったかい。 「・・・悠一郎、ありがと」 「どーいたしまして!お礼はちゅーでいいよ」 悠一郎がどこまで考えて私の手をポケットにお招きしてくれたのかはよく分からないんだけど、それはすごくすごく嬉しかったから、今日から悠一郎の言う通りにちゅーしてあげてもいっかな。ポケットの中で悠一郎の手を握り返したら、また、ポケットの温度が上がった気がする。 明日、やっぱり手袋持ってくのやめにしよっかな。 |