「桜の木の下にはね、死体が埋まってるんだって。桜はその血を吸って咲くから、だからあの色なんだよ」

一人でぼんやり桜を眺めていたら、不意に話し掛けられた。馬鹿なことを言う人間がいるもんだ。振り向いたら、が笑っていた。勉強が出来るという意味では頭が良く、人間性からすると恐らく決して頭が良いとは言えない、そんな人間。今みたいなことを言っては周りの人間を困らせる、そんな人間。

「馬鹿かお前、だったら日本中に何百万って死体が埋まってることになるだろ」
「そうかもしれないでしょ」
「んなわけあるかっつーの」

そんな本気で全否定しないでよ、と困ったように笑いながら、はひらりと散った花びらに手を伸ばした。その手の中に花びらは上手く包み込まれる。握った手を引き寄せて、は目を閉じた。どうせ頭の良くないのことだ、また訳の解らないことを言い出すに違いない。

「願い事が、ひとつ叶うんだよ」

また馬鹿なことを、と内心思ったけれど、そこには触れないでおくことにした。何を願ったのか尋ねようかとも思ったけど、それもやめた。俺が聞いたからって何になるっていうんだ、どうにもならないことだったらどうする、どうしようもなくなるだろ。想っても想っても有り余るくらいの気持ちですらどうしたらいいのか分からなくて困ってるのにこれ以上どうしようもないことを増やしてどうするつもりなんだ、ってことだつまりは。
が、小さく呟いた。

「ずっと一緒にいられたらいいのにね、隼人」










                           (だけど俺はその方法を知らないんだ)






ノンノ、もしくはシューニャ
title by fjord (thank you !)