まるで外国のスプラッタ映画でも観てるようだった。目の前は真っ赤なんだけど、錆びた鉄のような臭いはしないし、飛び散ったものは私に擦りもしないし、音だけはやけに大きく聞こえる、みたいな。私はシアターの真ん中に座ってポップコーンをつまみながら、この退屈なB級アメリカンホラーをぼんやり眺めている。不意に銃声が響いてその方向に視線を遣ると、頬っぺたに何かどろりとした生暖かいものが飛び散った。
ああ、そうだ。私、今仕事中なんだった。




「何ボンヤリしてんだ。死ぬ気か」

「・・・それもいいかも」

「アホか」





頬っぺたについたものを隼人が着ていた服の袖でごしごしと拭い去った。摩擦で頬っぺたがひりひりする。なんだよ隼人、もっと優しく出来ないの。痛い痛い痛い。頬っぺたが焼け落ちるっての。
そうだ、私ここで人を殺してるところだった。私が観客なんてとんだ思い違いだ。寧ろ私はスクリーン上の女優である。獄寺隼人・W主演、なんてね。誰が見てくれているんだろう、私のこの姿。誰も見てない?観客動員数ゼロ、ある意味ギネス記録だ。誰も見ていない、誰にも見せてはいけない。
見ているのは、スクリーンの向こうにいるのは、あれはさっきまでの私?










劇場型犯罪
(観客は1人残らず消してしまいます)