新学期が始まる前に書類の整理をしなきゃと思って学校に向かう途中、同じく部活のために学校に向かうさんを見つけた。挨拶をして、他愛無い話をして、ふと思った。君は知ってるのだろうか。今日がエイプリルフールだということを。さりげなくそのことを訊いて見たら、君は悔しそうに「直子が引越しするから転校するってメールしてきて、びっくりして泣きそうになって電話したら嘘だったんだよー!」と言って、「でももう騙されないもんね!」と笑った。なんて可愛い顔で笑うんだろうね、さん!騙されて泣かされたっていうのに、笑ってちゃだめじゃないか。本当にこの子はお馬鹿さんだね。お馬鹿さんなのは今日1日だけにしておくれ、なんて思うけれども、そのお馬鹿さんなところも可愛いと僕は思ってしまうのだ。そんな僕も馬鹿か?





「じゃあそんなに用心してるさんを騙すのは難しいだろうな」

「ふっふっふっ!油断大敵だからね!雲雀くんにだって今は用心してる!」

「仕方ないから持田あたりで我慢しよう」

「持田君はすぐに騙されそうだなあ」





君もね。本当にすぐ騙されてどこかに攫われていってしまいそうだよさん。心配で心配で仕方ない。だけどそんな心配を表立って出来るほど僕は素直じゃないし、なにしろそんな関係でもないから、心の中だけで心配してる。さんと僕はただのクラスメイトだから。たまに教室に行く僕の前の席で、最初は恐る恐るだったけど、話しかけたら答えてくれて、そのうち僕は彼女のことを可愛いと思うようになった。多分最初は小動物的な可愛さだったんだけど(トリ的なね)、だんだんそうじゃなくなって、いわゆるこれが好き?みたいな。僕ってこんな生々しい感情もってたっけ?みたいな。
でも、そうやって君を騙して攫ってしまえたら、そうするのが僕だったらなあ、って思ってしまう。そしたらこんな心配しなくてすむのに!ああ、僕っていつのまにこんなに気持ち悪い人間になってしまったんだろう。










不意に沈黙が訪れたので横の彼女を見たら、同じように彼女も僕を見たので思いっきり目があった。









「・・・さん、」

「なーに雲雀くん」





「ほんとは、僕ね、君のこと好きだよ」





「・・・・・・」

「・・・なーんt

「私さっき、もう騙されないって言ったのに、雲雀くんったら!」

「そうだったね、だから今『なんちゃってー』って言おうとしたところ」

「あはは、邪魔しちゃったね、ごめんね雲雀くん」





冗談だよ、好きだなんて。いやいや、違うね。嘘なのは僕の「なんちゃってー」のセリフだ。やっぱりさんってお馬鹿さんだね用心してるって言ったのに騙されてるじゃないか。君はもう一生僕の「なんちゃってー」の嘘を信じて騙されたまま生きていくんだよ!









吐きは、
(あとで嘘だったんだって気付いても遅いんだからね!)