いいこにしてればばくのねがいもかなうの?






























だったらぼくは、ふつうのにんげんになりたい。



















































「勉強を頑張りなさい」

「先生のいうことをちゃんと聞きなさい」



幼かった僕は周りの大人達のいうことを聞く従順な、一般的に言うと要するに「いい子」だったので、勉強しろといわれたら勉強するし行くことを聞けといわれたら聞く、寧ろ言われなくてもそれらをやってのける実に手の掛からないこどもだったらしく、周りの大人達はいつも手放しで僕を褒め称えていた。



「恭弥くんの願い事はいつか必ず叶うわ」



と笑って僕の母親は頭を撫でる、あの頃僕はソレがとても嬉しくて誇らしくて、そして少し前に読んだ、木から作られた人形がいつか人間の子供になる噺を思い出したりした。それが只の思い出なら良いんだけど、その噺はいつまでも僕の記憶に残り、今でも離れないのだ。僕は自分が人形だと気付いた。周りの大人達にいいように操られているだけの人形。だけど気付いたところでどうにもなりはしなかった、強いて言えば僕が風紀委員長になった事で操られていた糸を断ち切ったことぐらいで、僕が人形であることに何の変化もなかった。僕は勉強も出来るし運動も出来るし何においても1番だったので1番じゃなくちゃ気が済まないという変なプライドを持っていたし僕が誰かの下にいるなんて思いもよらないから、取り敢えず僕は「いい子」を続けていくことにした。そんなに幼くはなかったけれど、このままいい子にしていれば神様が現れて僕を人形から普通の人間にしてくれるんじゃないかと心の何処かで期待して僕は生き続けていた。風紀委員長として畏怖を集める僕がこんなにも苦労していて実は子供じみたことを考えていると周りの奴らが知ったらどんな顔をするかな、まあ気付かれないように僕は今までも上手くやってきたしこれからもきっとずっと上手くやっていく。
1学期期末テスト、僕は相変わらず1番だったけれどいつもと違ったの は1番が僕一人じゃなかったことだ。誰だよ僕の日常を壊そうとする奴は、誰だよ僕の願いのジャマをしようとする奴は。、知らない名前だ。正しくは知らないというより覚えてないというのがいいんだろう、僕は僕より下の群れる奴らのことなど興味はないのだから。でもそれから先、その名前、が僕の目の前に張り付いて離れなくなる。










僕は彼女が自分と同じクラスであることに今更ながら気がついた。そしてどうして今まで気付かなかったんだろうと僕の神経を疑うほどに彼女は存在感のある人物だった。なぜかいつも人の中心にいる。他の奴らと喋るし笑うし泣くし怒りもする、人間性のある人間だ。僕なんかより余程彼女の方が人間らしかった。言い方が悪いかもしれないけど僕より劣っている奴がどうして僕より人間らしいのか僕は不思議で仕方ないので。ある日の放課後彼女に声をかけてみた。すると思った入りトーンの高い声で返事が返ってきた。



「なんだ、雲雀ちゃんと喋れるんじゃん」



そう言って笑った。僕は何だか不機嫌になってしまって彼女に背を向けた。



「雲雀、私と友達になろう」



歩いて教室を出て行こうとする僕を彼女が呼び止めた。どうしてこんなにも突拍子のない事を言い出すんだいは、と僕は溜息混じりに答えた。



「私の名前、って言うんだよ。恭弥って呼んでもいい?」



はまた笑った。はよく笑うんだね、と僕は嫌味を込めて言ったつもりだったんだけどはありがとう、と言ってまた笑った。



「雲雀って綺麗な苗字だね、やっぱり雲雀って呼んでいい?」

「勝手にしたら。僕は委員会の仕事があるからもう行くよ」



そう言って教室を出ようとしたらまたが僕を呼び止めた。



「雲雀、私も仕事手伝いたいな」

「・・・物好きだね」



はまた笑うと、先に応接室に向かって歩き出した僕に小走りで追い
ついてきた。廊下を歩きながら、は色んな事を喋った。好きな音楽
、テレビ番組、お笑い芸人、よくもこんなに話題が見つかるものだと呆
れていたらは応接室でも他愛のない事を喋り続けた。時折僕にも話
題を振ってくるのだけど大抵の話題に僕は疎かったので基本的に
喋るのを僕が聞いているような感じになっていた。
は書類の整理を手伝いながら小さく歌を口ずさんでいた。



「When you wish upon a star,makes no difference who you are・・・」

「・・・、その歌・・・」

「ああ、『星に願いを』だよ。雲雀、ピノキオ見た事ある?」



私、ピノキオ大好きなんだよ、とは言うと再び歌を口ずさみながら
書類の整理を始めた。の歌う声は決して大きい訳じゃないのによく
通る声だった。










それから何日か、僕との奇妙な関係は続いていった。ある日は僕が
を屋上へ誘い、ある日はが僕を河原に誘ったりして、2人で寝
転んだりの歌を聴いたりした。
そして僕は知らなかった、僕が以前の僕と変わってきている事に。僕は
前より口数が増えたし笑う回数も増えた。僕はつまり、人間らしくなっ
て来はじめていた。



「私ね、ピノキオだったんだよ」



ある日唐突にが言った。
いい子にしていれば神様が現れて私の願いを叶えてくれるんだってずっ
と信じてたんだよ。だから勉強も必死で頑張って1番になれたその日に
ね、私と雲雀が話をしたの。そして私の願いが叶ったんだよ。
はそれだけ一気にいうと、笑った。



「だから雲雀は私の神様ね」




そこで僕は全てを知った。いい子にしてれば神様が現れて僕の願いを叶
えてくれる、僕の目の前にあの日神様は現れてくれていて、とっくに僕
の願いを叶えてくれていたのだ。僕が以前より口数が増えたのは、笑う
回数が増えたのは、僕が人形じゃなくなっていたからなのだ。
つまりそれは、そう、僕はこの言葉を言わなければならないね。



















僕の
(青天の霹靂の如く突然に夢は君の元にやってくる)