「綱吉ーキャンプ行こーよー」

「キャンプ?・・・行く」










俺が日本で過ごす最後の夏、からキャンプに誘われた。は、簡単に言うと幼なじみってやつで、それで終われば苦労しないんだけど、ほら少女マンガとかでよくあるパターン、幼なじみに恋しちゃうって話。つまり、それ。ようするに、俺はが好きってこと。が俺にそんなマンガを無理矢理渡して読ませるもんだから、まさか俺の気持ちばれてんのかなとかも俺のこと好きだったりしてとか馬鹿みたいなことを考えたりしたけど、本当に馬鹿なことだった。の素振りは全く変わらず、相も変わらず俺を男として見てないような無防備なままだった。だから、今回のキャンプもどうせ「2人で行こーよ」って無邪気に笑って言うんだろ?










「ねー綱吉、2人で行こーよ」

「うん、いーよ」










ほらね、予想通りだ。に関して俺に分からないことはきっと何一つとしてないんだ。別に嫌味とかじゃなくて、ただ純粋にのこと好きってだけ。そんなに思うところも言いたいこともたくさんあるんだけど。だけど、言えないんだよね。臆病なんだ、俺が。








































夏の終わりのキャンプ場は意外と人が少なくて、俺とは周りに誰もいない、静かな場所にテントを張った。すぐ近くには鬱蒼と木が生い茂る。キャンプ場に着いたのが既に夕方だったこともあって、テントを張ったり夕食を作ったりしているうちに日は沈んで、すっかり夜になってしまった。
揺れる火を丸太に並んで腰掛けて眺めながら、いろんなことを俺達は喋った。幼稚園の頃の話だったり、中学生の頃の話だったり、そのほとんどが思い出話で、は本当に楽しそうに話をしていた。俺がイタリアに行くっては知らない。だけどきっと心の何処かで俺がいなくなるって感じてる。はそういう人なんだ。だから、無意識のうちに思い出話を始めたりしてる。










「そういえばこのキャンプ場って熊が出るらしいよ」

「く、熊?!、なんでそんな危ないトコに来たんだよ!?」

「だって、本当に熊が出たら綱吉が助けてくれるでしょ?」










はにっこり笑ったままそう言った。なんで、は、はこんなに・・・
火が一際大きく揺れて、その形をだんだん崩し始めた。はそれを見ると「そろそろ寝よう綱吉」と言ってテントの中に入っていった。俺は小さな火を完全に消すと、に続いてテントの中に入った。は既に寝袋に潜り込んでいる。俺も同じようにするのを確認して、は目を閉じてしまった。
言いたいことがたくさんあったのに結局言えず仕舞いだ。はそんな俺の心も知らないで、気持ちよさそうに寝息を立て始めてる。睫毛が長いのは昔から変わらない、鼻がスッとしてるのも。でも顔立ちがちょっと細くなったり、唇にグロス塗ったりしてるのはが変わったから。ねえ、はこんなにも大人になっていってるのに、俺は昔のまま、ダメツナのままじゃないか。こんなにも好きなのに、どうして何も言えないんだろ。
目を閉じたままのに、俺はそっと覆い被さった。が起きる気配は、きっとない。の唇にそっと自分のを近づける。罪悪感が無いワケじゃないんだ。だけどにキスしたらきっと後戻りは出来なくなって、前に進むしかできなくなるから、そうでもしないと俺はきっと何も言えないままなんだ。の呼吸する音が聞こえるほどに近付いたとき、が目を開いた。少しびっくりして、の目が大きい。










「つ、綱吉どうしたの?」

「・・・トイレ、着いてきて」










あーあ、何言ってるんだろう俺。どうしようもないくらい、ダメツナだ。








































にそう言ってしまったので仕方なくトイレに行く。はクスクス笑いながら「綱吉ってば熊が怖いの?」と言った。
俺がトイレに入っている間、は気を利かせているのか、俺に話し掛け続けた。だけど、不意にの声がしなくなったので、俺は「?」と大声で呼んでみた。でも返事がないので不安になった俺は、大慌てでトイレを飛び出した。そのとき、急に後ろから「わっ!」と言う声と一緒にが飛び付いてきた。










「っ、何やってんだよ!」

「あははっあたしが熊に襲われちゃったとでも思った?」










俺の背中に抱きついたままが無邪気に笑う。背中に当たる体温は昔のままなのに、背中に当たる柔らかい感触は昔と違う。俺だって男だからドキドキするんだ、ましてやそれがならなおさらのこと。は無防備すぎるんだ。
俺はの腕を掴むと、体を反転させて、をトイレの壁に押しつけた。の顔に驚きの色が表れる。










「つ、綱吉・・・?」

「・・・ねえ、山の中じゃ獣より人間の方が怖いって知ってる?」

「え・・・どうゆう、こと?」

「こうゆうことだよ」










俺はの首筋に顔を近づけると、白いそこに小さく吸い付いた。が俺の耳の横で小さな悲鳴みたいな声を出す。首筋から顔を上げての顔を見たら、は泣きそうな顔をしていた。なんだか切なくなった俺は、微笑むと、の頭を撫でた。は一瞬ビクッとして目を強く閉じたけど、俺の手の優しさにふたたび目を開いた。










「・・・、こうゆうことだよ」

「つ、なよし・・・なん、で・・・」

「ごめんね、怖い思いさせて。ほら、テントに戻ろう?」

「・・・」










の手を握って俺は歩き出す。の手はまだ少し震えていた。これで後戻りは出来なくなったんだ。俺は、に言わなくちゃいけない。ねえ、こうでもしなきゃ何も言えない俺を、はダメツナだと笑う?卑怯な俺を軽蔑する?それでも俺は、が好きだよ。










・・・好きだよ」










そう言ったら、握っていたの手がピクッてなって、は立ち止まった。ああ、可笑しい。言いたいことが山ほどあった筈なのに、結局言えたのはこれだけだ。まあ山ほどある中でも一番大事なことを言えたのが唯一の救いかな。の顔を見たら、は、泣いてた。泣きながら、は言った。










「綱吉の、ばかあほ・・・綱吉なんか、綱吉なんか・・・」

「・・・俺なんか?」

「・・・あたしだって綱吉のこと好きだもん!」










俺は「意味分かんないよ」って笑って、を抱きしめた。





















(お互い意味も分からずお互いを傷付けてお互いを求めてたんだね)