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山本はものすっごい人気者だ。男女問わず。特に女の子たちの中にはファンクラブまで結成しちゃってる人までいる。体育の時とかすごいんだよ、ほんと。下手なプロ野球選手より絶対人気あると思う。そんな山本を、私は遠くからぼんやり眺めてるだけ。山本はかっこいいし、優しいし、実は山本のこと好きだったりするんだけど、山本と話したことってほとんどない。席替えして偶然隣の席になって、山本が落とした消しゴムを拾ってあげたときと、廊下でよそ見しながら歩いてたら山本にぶつかったとき。それくらいしか思い出せない、てかそれだけ?それでも、やっぱり山本はかっこいいと思うし、好きなんだなって思う。 そんなある日の塾の帰りに、山本が一人でぼんやりブランコに座ってるのを見つけた。 「・・・山本?」 「ん?お、じゃん。こんな時間に何してんの」 「私、塾の帰り。山本こそ何してるの」 「あー・・・ちょっとな。聞いてくれっか?」 「・・・うん、いいよ」 山本は困ったようなよく分からない顔で、とりあえず普段の山本とは違う雰囲気で笑うと、ブランコから立ち上がって、それから近くのベンチに腰掛けた。私も同じベンチに山本から少し離れて座った。いいよ、とか言ってみたものの、私なんかが山本の話聞いても何の役にも立たない気がするのは気のせいでも何でもないと思う。みんなのヒーロー山本の話を単なるクラスメイトA的存在の私が?ちょっと厚かましいかも。でも今更帰るとか言えないし、とりあえず黙って山本の話を聞くことにした。 「実はさ、さっきフラれたんだよな」 「フラれた・・・って、彼女に?」 「うん。なんか別に好きな人出来たとか言われた」 「・・・そう、なんだ・・・山本以上にかっこいい人とか、いるのかな」 「、はお世辞上手なのな」 山本は乾いた声で笑った。お世辞、なんかじゃないのにな。そんなこと言えないけど。山本は、彼女のことがすごく好きだったんだろうなあ。あんなにいつも元気な山本がこんなになるほど。私、山本になんて言えばいい?どうしよう、今の私はそんな山本にかけてあげられる優しい言葉を持ってない。山本は悲しいはずなのに、私はそれを慰めるどころか喜んでしまいそうだ。最低の人間、私。でも、だって、山本のこと好きなんだよ私。山本のこと好きじゃなかったら、ただのクラスメイトだったら良かったのに。 「・・・っ、」 「ちょ、?なに泣いてんだよ、大丈夫か?どっか痛いのか?」 「ち、違っ・・・山本が、」 「、オレが?」 「山本が、泣かないから・・・私、代わりに、」 「・・・そっか、ありがとな。オレ、みたいなヤツ好きになれば良かったのにな」 山本がそう言って悲しそうに笑うから、私はますます泣きたくなった。嘘つきな私、だから罰が当たるの?山本の言葉は今の私には残酷すぎる。優しくて大好きなはずの山本の笑顔も、今は全然見たくない。山本のこと好きじゃなかったらこんなことにはならなかった? こんな想い、知りたくもなかった。 |