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どうしようもないときって、あると思う。例えば、偶然見かけた可愛いワンピースを値段を気にせず衝動買いしちゃった時とか、お気に入りのマグカップを落として割っちゃった時とか、自分の彼氏が他の女の子と仲良さそうに歩いてるの見ちゃった時とか、ね。そういうときはもう完璧に思考が停止してしまって、上手く言葉にならない感情が溢れてしまって、泣きたいのか怒りたいのか分からなくなる。だから、さっきから黙りこくったままの私の目の前で、ブン太はめんどくさそうに風船ガムを膨らましては割るいつもの癖を繰り返している。 どうして、ブン太は何も言わないの。 「・・・なあ、俺用事あるんだけど帰ってもいいか?」 「・・・いやだ。帰っちゃ、やだよ」 「じゃあさ、黙ってないで何か言えば?このままじゃ時間の無駄だろい」 「っ、ブン太は!なんで、なんで何にも言わないのっ!!」 「は?」 「・・・あの女の子は妹だとか、あれは誤解だとか、なんか、言うこと、無いの・・・」 「は俺にそう言ってもらえれば満足なのか?」 誰もいない放課後の教室で、私が抑えきれない感情を表に出して、怒鳴っても、涙を零しても、ブン太は相変わらず風船ガムを自由自在に膨らますのを止めない。前はもっともっと優しい顔で私のことを見てくれた瞳も、風船ガムの膨らませ方を教えてくれた唇も、今はぼんやり窓の外の夕焼けの空を眺めているだけで、呆れたような溜息で風船ガムを膨らませているだけだ。 どうして、ブン太は私のことを見てくれないの、私の欲しい言葉をくれないの。 「がそう思いたいだけだろい。俺はそんなくだらないこと言わないぜ」 「どうして、・・・なんでなのブン太、」 「なんでなんでって、ちょっとは自分で考えろい。・・・あー、もう時間ギリギリだから俺行くわ」 「、やだっブン太!待って、行かないで!!」 「じゃあな、」 「やだよブン太、待って、行かないでよ、ねえブン太、ブン太!お願いだから!!」 私の言葉が聞こえないふりをして、ブン太はちょっとだけ足を止めて最後に私の名前を呼んで教室から出て行ってしまった。ああ、もう本当にどうしようもない。もう戻らないんだ。私は、ブン太に「あの女の子は妹だ」とか「おれは誤解なんだ」とか、言ってほしいわけじゃない。それはブン太が言ったようにくだらないことで。ねえ、どうして。私はただ、一言が欲しかっただけなのに。その一言すらくれないの。「好き」も「愛してる」もいらないの。 最後くらい、「好きだった」って優しい嘘をついてよ。 |