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リョーマくんと喧嘩した。それはそれは盛大に、たぶん。と言っても、怒鳴りあったり殴り合ったりそういう喧嘩じゃない。テニス部の練習を見に来ていた女の子からプレゼントを渡されて告白されているリョーマくんを偶然見かけて、それで私がやきもちやいて、一方的に不機嫌になっていたらリョーマくんに呆れられてしまった、そんな感じ。いつもそう。リョーマくんは1年生なのにテニスが上手くて、帰国子女で、1年生だけじゃなくて先輩からも大人気だから、私はやきもちをやかない時がないくらいなのだ。そんな私にリョーマくんはいつもなら「好きなのはだけだから心配しないで」って優しくキスをしてくれるのに、今日は違った。なんだか泣きそうな顔をして、「そう、分かった」とだけ言って帰ってしまった。 「・・・電話、しようかな。あー、でも出てくれなかったらどうしよう・・・リョーマくん、怒ってるよね・・・」 ベッドの上で、携帯を握りしめてごろごろしてばっかり。さっきから、着信履歴の一番上にあるリョーマくんの名前を表示しては消す、その繰り返し。リョーマくんが電話に出てくれたら、真っ先に謝ろう、疑ってごめんね、わがままでごめん、リョーマくんのこと大好きなんだよ、って伝えたい。でも、電話に出てくれなかったら?このまま仲直りできないで別れちゃうの?他の女の子と仲良く歩くリョーマくんを見るの?そんなの、嫌だよ。 不意に、携帯が震えて着信を告げる。流行りのラブソング、リョーマくんからだ。 「・・・もしもし、リョーマくん?」 『あ、。・・・良かった、電話出てくれて』 「あの、あのねリョーマくん、私・・・!」 『ちょっと待って。直接話したいから、出てこれる?今の家の前にいるんだけど』 「分かった、すぐ行くね」 『ん。肌寒いから上着着てきなよ』 季節は秋、リョーマくんと出会ってもう半年経ったんだ。リョーマくんが言ってくれたとおりにパーカーを羽織って外に出ると、家の前の壁に寄りかかってリョーマくんが立っていた。今日の夕方別れたばかりなのに、もうずっと会ってなかったみたいな気持ち。こんなにもリョーマくんのことが好きで、好きで、仕方ないのに。 「少し、歩く?ゆっくり座って話したいし」そう言ってリョーマくんが私の手を取って歩き出す。リョーマくんの右手と私の左手、いつも通りリョーマくんの手は少し冷たくて、それでも手を繋いでいるとだんだん温かくなってくる。 「・・・リョーマくん、あの、私・・・」 「あのさ、。俺いつも言ってるけど、好きなのはだけなんだよね」 「う、うん・・・」 「でも、はいつも不安そうにしてる。そんなに心配?」 「・・・ごめんね、でも、リョーマくんはかっこよくて人気だから・・・」 「そっか。じゃあやっぱり仕方ない」 「え?」 「これあげる」 近所の公園のベンチに並んで座ったリョーマくんから差し出されたのは小さな箱だ。ピンク色の箱に金色のリボンがかかっている。リョーマくんに促されてリボンを解いて箱を開けると、中に入っていたのは小さなシルバーリング。驚いてリョーマくんを見たら、そっぽ向いてるけど、頬っぺたが少しだけ赤くなっている。きっと、私はもっと赤くなってるんだろうけど。こんなの、まるで、プロポーズみたいだ。 「今はまだ安物だけど、10年後くらいにはちゃんとしたのあげるから」 「リョーマくん、それって・・・」 「だからさ、それまでの予約ってことで。それつけてて」 「あの、私で、いいの?」 「がいい。好きだよ、愛してる、一番に」 箱から指輪を取ったリョーマくんが、そっと私の左手の薬指にそれを嵌める。ああ、もう。私、幸せになるしかないじゃない。 |