私は、今泉くんが好きだ。偶然見に行ったロードレースでトップで走る今泉くんの姿を見たときから、ずっと。ただ、この想いを彼に告げることはない、そう思っていた。彼が、この総北高校に入学し、我が総北高校自転車競技部に入部するまでは。今泉くんは2つ年下だったし、何よりロードレースではちょっとした有名人だったからまさかうちに来てくれるなんて思わなかったし、何より自転車が大好きで大好きで仕方ない、そんな雰囲気だったから、私の想いが彼の重荷になってしまうのが嫌だから。というように御託を並べて言い訳をしているけれど、実際はただ単にフラれるのが怖いからだ。今泉くんが入部してきて3ヶ月、部活の先輩後輩、マネージャーと選手、その関係だけでいい、大好きな今泉くんと毎日会えて会話をして、この関係を壊したくないからだ。だけど気持ちというのはどうにも正直で、今泉くんを見れば見るほど、今泉くんと話せば話すほど、今泉くんを思う気持ちはますます強くなる。
今日も何度目か分からない溜息を吐く。





「ちょ、何回溜息吐けば気が済むんショ・・・いい加減うざいっショ・・・」

「うるさいなー巻島は、ちょっとは気遣ってよね」

「休み時間の度に俺の席に来て溜息吐いてるだけのが悪い」

「だってさーこういう話出来るの巻島しかいないもん。金城はお堅いし、田所っちはクマさんだし」

「クマさんって・・・ひどいっショ」

「ねー巻島、私どうしよう。今泉くんが好きなんだけど、IH前に迷惑かけたくない」

「・・・じゃあずっと今までどおりに今泉のこと眺めてればいいっショ」

「・・・そうだよね、やっぱり、こんなにも近くで見れるだけで私幸せだよね」





別に何の解決にもならない、いつも通りの会話。結局は巻島の言うとおりで、好きで好きで仕方ないとどれほど呟いても最終的には「見てるだけ」という結論に落ち着いてしまう。たぶん巻島は私が見栄を張って「迷惑をかけたくない」なんて理由をこじつけていることも分かってる。けど別にそれを指摘してこないし、当たり障りない答えをいつもくれるから、だから巻島にこうやってぐだぐだ今泉くんへの想いをぶつけるのだ。まあ巻島がそんな私をどう見てどう思っているのかは気にしないことにする。
目を閉じたら、網膜に焼き付いている今泉くんの走る姿が浮かぶ。瞼の裏の今泉くんは、私を見て笑ってくれるのにな。










この恋は網膜にわるい
(誰の網膜?それは「」の網膜に違いない)